今の仕事がほんとうに嫌だ。
やめたい。
ずっと「仕事辞めたい」って考えながら、地元でフリーターをしている。
このまま、アルバイトを続けていても正社員になるつもりはないし、かと言って結婚をする気もなかった。
それこそ5年付き合っていた彼氏と別れたばかりだ。
結婚なんてまだまだ先だと感じる。
そんなことより、「結婚はまだ?」なんて煽る親がいる実家から離れたい。
親というのはなんで結婚、結婚言うんだろう。
目次
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地元を出てリゾートバイトをしてみようと思う
毎日スマホで、求人サイトを見ていた。
自分が何をやりたいかわからない。
何が向いてるのかもわからない。
やってきた仕事といえば、飲食店の接客が多いだけ。
今、やってる仕事も飲食店だった。
飲食店経験しかない私は、何ができるんだろう。
貯金なんてぜんぜんできていないフリーターの私にとって、地元を出るにはお金が必要である。
お金もない。
仕事もやめたい。
地元を出たい。
お金さえあればよかったのに。
ひたすらネットで調べてみた。
貯金がなくても地元を出られる方法なんてあるはずない。
それでも、やっぱり実家を離れて暮らしたかった。
たまたま求人サイトで見た「リゾートバイト」という広告が気になった。
初めて聞くアルバイト。名前のとおり、リゾート地でバイトをするということだろうか?
いくつかリゾートバイトをやっている会社があるみたい。
どこの会社がいいとかわからなかったので、とりあえず気になったハッシャダイリゾートにLINEしてみることにした。
リゾートバイトといえば沖縄しかない
とにかく私は沖縄に行ってみたかった。
リゾバ=沖縄のイメージがあった。沖縄には一度行ったことがあったけど、家族で行ってほとんど覚えていない。
沖縄の広い空やきれいな海を、自分の目で見て忘れないようにしようと誓った。
私がたまたまLINEで相談したハッシャダイリゾートという会社は、沖縄の求人をたくさん持っていた。
しかも、沖縄の飲食店のバイトが多いという。
飲食店経験しかない私にとって、なんだか勝手に運命を感じてしまった。
せっかくだから沖縄にしかない飲食店がいいな。
アメリカンな感じでもいい。
ステーキハウスとか。
インスタ映えするようなカフェでもいい。
沖縄でリゾバをしている感じを、せっかくならとことん味わってみようと思う。
初めてのリゾートバイトは沖縄の飲食店
ホテルで働くのは何となくハードルが高い気がした。ホテルのほうが時給が高い。
リゾートバイトで稼ぐなら、高時給のところが人気だとか。
私には時給なんて関係なかった。
だって、地元から出て沖縄に行きたいだけなんだもん。
目的は、ただ一つ。
沖縄に住んで働くことだった。
そんなアバウトな目的でも、ハッシャダイの担当さんは受け入れて相談に乗ってくれた。
なんて聞いたことがあった。
という答えが返ってくる。嘘かもしれないけど、ただ「沖縄行きたい」だけでリゾートバイトをしてもいいんだよと言われた気がする。
むしろ、北海道に行きたいのに沖縄のリゾバを探しているわけじゃないからいいか。
だから私は筋が通っているはず。
LINE相談から一週間後、私は沖縄創作料理屋さんでリゾートバイトをすることが決定した。
最初は苦手だった地元の先輩
あっという間に沖縄に来てしまった。
こんなに簡単に沖縄に来れるもんなのか。
すごいな、リゾートバイト。
那覇空港からゆいレールで国際通りに向かった。
沖縄っぽい。
なんだか沖縄の景色をみたら、緊張してきてしまった。
働くお店に着いたら、店長が受け入れをしてくれる。
住むところになる寮はお店から歩いて10分くらいらしい。
店長からの説明が一通りおわると、今働いているメンバーに紹介してくれた。
この日。私にとってリゾートバイト初日。
初めて会う人ばかりのなかに、なんだか馴れ馴れしくしてくる人がいた。
その人は副業でこの店に週2で来ている。
初日の私に、これでもかというくらいに質問攻めをしてきた。
私は自分のことを聞かれるのが嫌いだった。
なんで、この人はこんなに聞いてくるんだろう。
正直、めんどくさかった。
自分のことは何一つ言わないくせに、聞いてくるヤツ。
まじ苦手。
話すのが楽しいのかもしれない
その人と年齢が近いことが判明した。
話していると、世代がいっしょで盛り上がる。
苦手といいつつ、何も喋らないヤツよりはマシかなとさえ思うようになる。
暇な時間はどうしても雑談してしまう。
時間が経つのが遅く感じるから、世間話をするしかないのだ。
知らない場所で出会った同世代はなんだか心強く、少しずつ私も喋るようになる。
学生時代はあれだけ同い年ばかりで、離れていても2〜3個くらいで。
社会に出たら、ほとんどが年上だ。
だから同世代に出会うのは貴重で、たまに懐かしい話ができるのがとても嬉しかった。
中学のときにハマってた音楽とか。
好きなタイプとか。芸能人とか。
カラオケでは何歌うとか。
最近観た映画の話。
今、観ているドラマの話。
その人の本業の同僚の話。
いつの間にか、もっと話したいかも。
なんて思うようになってしまった。
それは、その人がいないバイトの日はなんだか静かでさみしかったからだ。
私は話し相手が欲しかっただけなのか、その人と喋りたいだけなのかわからなかった。
それでも「話したい」って思ってしまったんだよね。
シフト希望を合わせるようになってしまった
週2しか入っていないその人は、だいたいシフトを出す曜日が決まっていた。
毎週月曜と木曜。
月曜と木曜に休んでしまうと、その人に会えないと思った。
いつのまにか、休みのシフト希望は月・木を外すようになる。
いつだったか、その人がとなりのジューススタンドのドリンクを奢ってくれた。
そう言って、毎回同じドリンクを飲んでいた。
って思っていたけど、いつのまにか彼がいない曜日に一人でジューススタンドに行っても、彼と同じドリンクを注文している自分がいた。
そして私もそのドリンクばかり注文するようになってしまった。
誰かに話すということは、もうそれは恋である。
リゾートバイトを始めて1ヶ月半が過ぎたころ、友達にLINEをした。
LINEをしていて、少し迷った。
リゾートバイトで出会ったその人のこと。話すべきか、話さないべきか。
友達にその人の話をしてしまったとき。
気になるって認めてしまったようなもんである。
ちょっと気になる人がいると言ったら、それはもう恋である。
誰かにその人のことを話したら、気になる人で、もう少しずつ好きな人に近づいている証拠だ。
でも、最初は苦手だったんだよね。
めちゃくちゃ聞いてくるし。
なんかチャラいし。
なんて言い訳ばかり言ってるくせに、なんだか嫌いではないのだ。
人は嫌いな人の話か、好きな人の話しかしない。
嫌いじゃないなら好きってこと?
友達とLINEが終わったあと、ニヤニヤしている自分に気づいた。
自分がリゾートバイトで恋をするなんて思わなかった
リゾートバイトは出会いがある。
リゾバはワンチャン狙いだ。
リゾートバイトで出会って付き合って結婚した人も多い。
確かに全部本当だった。
周りをみて、確信した。
うちのお店の店長は、なんとリゾートバイトの派遣スタッフの子と結婚していたのである。
しかし、まさか自分がリゾバで恋をするとは思わなかった。
ぜったい恋愛しないと決めていたのである。
リゾートバイトは人生の夏休み。
ちょっとだけ沖縄に住んで、働いてみたかっただけ。
短期間しかいないのに恋愛したらめんどくさいだけ。
そんな風に思っていたのに。
私は出会ってしまった。
初めてのリゾートバイト。
場所は沖縄。
こんなベタな展開なんて、ドラマの世界かよ。
ごはん誘いたいけど予定が合わない
彼には本業があった。
ふだんはサラリーマンで、週2回だけうちの店でアルバイトをしている。
貴重な休日にバイトをしているというわけだ。
そんな忙しい彼と「ごはん行きたい」と思っても、誘えるわけがなかった。
だいたい、いつ行けばいいのかわからない。
お店が終わるのはいつも22時すぎで、それから飲みに行くと車通勤の彼は飲めないからだ。
わざわざ自分とごはん行くために、休日を返上してまで付き合ってくれるとは思えない。
アルバイト代に私は勝てるだろうか。
いや、勝てない。
私は、あまりにも忙しすぎる人を好きになってしまったことを後悔する。
リゾートバイトはもう2ヶ月が過ぎていた。
付き合いたいけど、付き合えない気がする
もし、万が一付き合ったら遠距離恋愛は確実だ。
二人でどこかに行ったこともないくせに、そんなことを考えてしまう。
え、どうしたらいいんだろ。
今すぐ付き合いたいわけでもなかった。
付き合うには、まだ早い気がする。
じゃあ、知り合ってどれくらいならいいのか。
その正しい答えを私は知らなかった。
リゾートバイト最終日。私は何もできなかった
私のリゾートバイトは3ヶ月という契約期間だった。
3ヶ月はあっという間に過ぎる。
びっくりするくらいに。
8月30日。この日が、私のリゾートバイト最終出勤日。
会えるのはこれで最後だと思うと、朝からさみしかった。
今日でほんとうに会うのは最後なのかな。
自分でも「最後」という気がしなかった。
夏休みのせいかまだ忙しく、「今日が最後」ということをなかなか言えずにいる。
ようやく二人で喋れるチャンスがきた。
最後っぽい顔。
なんて言われたら、私は泣きそうになってしまいそうで、今言うんじゃなかったのかもと考える。
本当はさみしいし、かなしい。
素直にそうやって伝えられることができたら、どんなにいいだろう。
もっと喋りたかったし、もっと一緒に働きたかった。
涙ぐんでしまいそうになって、私はすぐに洗い物に戻る。
それくらい動揺してしまったのである。
とシフトを上がる前に彼が言った。
これを言うだけで精一杯。
彼がなんて答えたのかも覚えていない。
「じゃあまたね」って言ってその場を去る。
帰り道は泣いて帰った。
「好き」だなんて伝えることはできなかった。
思いを伝えようとも考えていない私は、どうすればよかったんだろう。
久しぶりの恋が苦しかった。
泣きながら、「好きになってしまったかもしれない」と伝えた友達にLINE電話をかけた。
友達に泣きながら「さみしいさみしい」と伝えた。
と友達に言われる。
私、いつのまにか結構好きになっていたのかも。
自分では気づかないくらいに。
「好き」って気づくのが遅すぎるのだ。私は。
恋が叶っても、叶わなくても。
恋が叶っても叶わなくても、リゾートバイトで恋は生まれる。
新しい環境というのは、新しい出会いしかない。
初めて住む場所は、最初は馴染めないけれど、3ヶ月後はびっくりするくらい馴染んだ。
初めて働く場所は、最初はわからないことだらけだけど、みんなやさしかった。
別れるのがこんなにつらいと思わなかった。
好きな人と別れるのはつらい。
好きな人以外にも、ここ沖縄で出会った人たち。
たった3ヶ月でこんなに仲良くなれると思わなかった。
でも、地元以外の場所で友達ができるのはすごく嬉しい。
これがわかっただけでも、リゾートバイトはすごい。
初めてのリゾートバイトで恋をした。
それは叶わない恋だった。
それでも、沖縄に来てよかったと思う。
とにかく沖縄に行きたい、もうどこでもいい、リゾートバイトの場所を決めてもらおう。ハッシャダイリゾートで。
叶わなかった恋。
それでも、私は沖縄で恋をしてよかった。
私の初めてのリゾートバイトを決めてくれたのは、ハッシャダイリゾートという派遣会社。
ネットで調べていたら、たくさんの派遣会社があって迷ったけど、LINEで気軽に条件だけを言えばよかった。
自分の行きたいところなんて、自分でもわからないんだから、誰かに決めてもらうのも悪くないと思ったんだ。
とにかく沖縄に行きたかった。
沖縄っぽいところで働きたい。
時給よりも働きやすさ。
こんな条件でも探してくれたのは、今でも感謝している。
とりあえずLINEで相談してみるのがおすすめ。
一つ、心残りなのは好きな人と沖縄の海に行けなかったことだけ。それは秘密だ。